和歌と俳句

浅草

観音のいらかみやりつ花の雲 芭蕉

浅艸や乙鳥とぶ日の借木履 一茶

浅草や家尻の不二も鳴雲雀 一茶

浅艸の不二を踏へてなく 一茶

子規
けふをこそ かぎりと思へば 浅草の 鐘のひびきも 哀れなりけり

子規
浅草の五重の塔に暮れそめて三日月低し駒形の上に

子規
草刈がうばらかりそけたてしとふ佛の寺は千歳へにけり

秋晴れて凌雲閣の人小し 子規

浅草の雨夜明りやの棹 龍之介

啄木
浅草の夜のにぎはひに まぎれ入り まぎれ出で来しさびしき心

啄木
浅草の凌雲閣のいただきに 腕組みし日の 長き日記かな

茂吉
浅草の 佛つくりの 前来れば 少女まぼしく 落日を見るも

秋の暮の人にぎはひぬ浅草寺 万太郎

晶子
初夏の金龍山の鐘ひびく若き小姓の縞ちりめんに

晶子
浅草寺御堂に拝むかきつばたきざはし下るそのかきつばた

晶子
初夏の雨をながむるここちよさ浅草寺のきざはしに居て

茂吉
観音の高きいらかの北がはは雪ははつかに消え残りけり

茂吉
浅草のきさらぎ寒きゆふまぐれ石燈籠にねむるとりあり

仲見世を出て行く手なし秋の暮 水巴

白秋
金竜山 浅草寺の朱き 山門の 雪まつしろに 霽れにけるかも

仲見世のこの晴さびし水見舞い 万太郎

仲見世のかゝる月夜や寒詣 万太郎

甘酒の釜のひかりや夜の土用 万太郎

浅草の塔のすがたも師走かな 万太郎

仲見世歩む我れや落葉の降るを見し 淡路女



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