手賀沼

牧水
沼のうへに　まひあそぶあきつ　をりをりを　うき草の葉に　寄りていこへる

牧水
咲き出でて　日は浅からむ　真菰の花　うす紅のいろを　含みたるかも

牧水
秋の野の　芒のさまは　似は似つれ　みづみづしきよ　真菰の原は

牧水
ひとしなみに　なびける見れば　この沼の　真菰は北に　靡きたるなり

牧水
夕焼の　名残は見えて　三日の月　ほのかなるかも　沼>の上の空に

牧水
はるけくて　えわかざりけり　沼のうへや　近づき来る　鷺にしありける

夜の雪に聲わたりゆく鴨のあり　秋櫻子

苗代や沼の眞菰と風かよふ　秋櫻子

草籠に一人静も刈られたる　秋櫻子

瓜番や手賀沼に照る月を眺め　秋櫻子

手賀沼に棹しあそぶ冬ぬくし　青邨

麦笛を吹くや手賀沼筑波山　たかし

元日の沼のしづけさに来て触れぬ　楸邨

鳰あそぶ舟路はありぬ萱の中　楸邨

翔てるもの鵙なり萱の鳴るさむき　楸邨

笹鳴や畦は乾きて径となる　楸邨

寒き日がわたり萱鳴り萱鳴れり　楸邨

手賀沼の洲の残雪の暮れてひかる　秋櫻子

手賀沼の澄む日をかさね石蕗咲きぬ　秋櫻子

冬の雁鳴きすぎ轆轤とどまらず　秋櫻子

落葉焚くけぶりにうすく沼ひかる　秋櫻子

手賀沼の翡翠来鳴く椿かな　秋櫻子

いわし雲人はどこでも土平す　三鬼

犬連れて沼田の稲架を裸にす　三鬼

東西より道来て消えし沼の秋　三鬼

千の鴨木がくれ沼に曇りつつ　三鬼