和歌と俳句

水原秋櫻子

岩魚ゐる水をむすびて昼餉とる

小瑠璃の巣あらずや蕗が葉をかさね

雛つれし百舌鳥の聲なり歩をとゞむ

鳴きすぎてまなかひの桑に時鳥

ほととぎす窓しらみしとおもふより

菜畑を拓くや庭にほととぎす

蛙鳴きまぎれてきこゆ小葭切

郭公が芦原をわたる声きこゆ

郭公や野に疲れたる夕間暮

瓶に挿す青蘆なびけ夕風に

梅雨くらし金色のこる墨の銘

はなれ咲くや萍の敷く中に

白蓮をはなれぬ靄に鳰うかぶ

降りいでぬあすは望なる月の空

十六夜や佳き短冊に墨をする

霧はれて妙高月と空にあり

白樺のしづくして岳晴れぬ

栗焼きて澄みゆく月をわすれ居り

手賀沼の澄む日をかさね石蕗咲きぬ

冬の雁鳴きすぎ轆轤とどまらず

落葉焚くけぶりにうすく沼ひかる

冬紅葉はさめる森へ畝むかふ