日輪のかがよふ潮の鮫をあぐ
日輪のまばゆき鮫は裂かれゐる
鮫あげし室戸の船は松かざり
魚市のにぎはふ上に雪の不盡
麦の芽に鳶かも下りて光りゐる
鹿尾菜干す磯の草いちじるし
冬薔薇や燈台守はものを読む
鳴きつれて小鴨はひとの門に来る
夜の雪に聲わたりゆく鴨のあり
苗代や沼の眞菰と風かよふ
草籠に一人静も刈られたる
畦塗のひそかに居りぬ朴の花
春蝉や松はこぞりて花となりぬ
ひとつ鳴く蛙のひびく飼屋かな
雨蛙鳴き競ふなり梭の音
いかづちのとどろく窓の梭の音
鳴きこたふ山家の鶏やはたた神
紫羅傘に嶺の雷雨の打ちきたる
泳ぎつつ人紫陽花にかくれけり
青葭のそよぎて禽は水に入りぬ
七月の望の宵とて黍高し
焼岳は夏日に灼けて立つけぶり
炎天の火の山こゆる道あはれ
白樺の道なりければ空涼し
夏山の雪近みかも木がくれに
葛の花ひとりの湯浴みあけはなつ
岩魚干す日は白樺の真上なる
落葉松西日のキヤムプ道の辺に