和歌と俳句

涼し

涼しさや行燈消えて水の音 子規

涼しさや昼寐の貌に青松葉 漱石

どこ見ても涼し神の灯仏の灯 子規

涼しさや馬も海向く淡井阪 子規

大仏にはらわたのなき涼しさよ 子規

涼しさにへなげこむ扇かな 子規

すずしさや雲湧き起る海三寸 子規

涼しさや猶ありがたき昔かな 子規

涼しさのここを扇のかなめかな 子規

すずしさや片帆を真帆に取直し 子規

経の声はるかにすずし杉木立 子規

ちろちろと焚火涼しや山の家 子規

涼しさの昔をかたれしのぶづり 子規

われはたゞ旅すゞしかれと祈る也 子規

昼中の白雲涼し中禅寺 子規

すずしさや須磨の夕波横うねり 子規

涼しさや平家亡びし波の音 子規

涼しさや雨吹き下す空の闇 虚子

又けふも涼しき道へ誰が柩 子規

涼しさの闇を来るなり須磨の浦 漱石

涼しさや山を登れば岩谷寺 漱石

すずしさや裏は鉦うつ光琳寺 漱石

涼しさや奈良の大仏腹の中 漱石

顔にふるる芭蕉涼しや籘の寝椅子 漱石

見るからに涼しき宿や谷の底 漱石

すずしさの皆打扮や袴能 子規

涼しさや山を見飽きて蚊帳に入る 虚子

膝と膝に月がさしたる涼しさよ 碧梧桐

蟹とれば蝦も手に飛ぶ涼しさよ 碧梧桐

涼しさや蚊帳の中より和歌の浦 漱石

すずしさや波止場の月に旅衣 蛇笏

水盤に雲呼ぶ石の影すずし 漱石