和歌と俳句

御祓 夏越の祓い

八代女王
君により言の繁きを故郷の明日香の川にみそぎしに行く

貫之
みそぎする 川の瀬みれば から衣 ひもゆふ暮に 波ぞたちける

後撰集よみ人しらず
かも河のみなそこすみててる月をゆきて見むとや夏はらへする

後撰集よみ人しらず
七夕は天の河原をななかへりのちのみそかを禊にはせよ

拾遺集 よみ人しらず
そこきよみながるる河のさやかにもはらふることを神はきかなん

拾遺集 藤原長能
さはべなすあらぶる神もおしなべてけふはなごしの祓なりけり

好忠
禊する加茂の川風吹くらしも涼みにゆかん妹をともなひ

和泉式部
思ふことみなつきねとて麻の葉を切りに切りてもはらへつるかな

和泉式部
けふはまたしのにおりはへ禊して庭の露ちる蝉の羽衣

顕季
水無月の かはそひ柳 うちなびき 夏越しの払へ せぬ人ぞ無き

俊頼
身の憂さを思ひ夏越の祓へして世にながらへむ祈りをぞする

金葉集 源有政
禊する川瀬にたてる井杭さへすがぬきかけて見ゆる今日かな

千載集 藤原季通朝臣
けふくれば麻の立枝に木綿かけて夏みな月のはらへをぞする

清輔
川の瀬に 生ふる玉藻の 行く水に なびきてもする 夏払へかな

俊恵
禊して たつた川原の 柳かげ 帰るもの憂き 夕まぐれかな

俊恵
あすか川 あけは憂き世や かはるとて こよひみぎはに みそぎをぞする

俊成
思ふことみな尽きぬとて御禊する川瀬の波も袖ぬらしけり

千載集 俊成
いつとても惜しくやはあらぬ年月を御祓にすつる夏の暮かな

西行
みそぎしてぬさとりながす河の瀬にやがて秋めく風ぞ凉しき

式子内親王
御祓して河辺すずしき浪の上にやがて秋たつ心地こそすれ

千載集・雑歌 斎院中将
みそぎせし加茂の川波たちかへり早く見し瀬に袖は濡れきや

定家
みそぎ川ながすあさじを吹く風に神のこころや靡き果つらむ

定家
みそぎ河からぬ浅茅のすゑをさへみなひとかたに風ぞなびかす

定家
みそぎしてとしをなかばとかぞふれば秋よりさきにものぞかなしき

定家
みそぎすとしばし人なす麻の葉もおもへばおなじかりそめのよを

定家
みそぎしてむすぶかはなみ年ふともいく世すむべき水のながれぞ

定家
まだきより麻のすゑばに秋かけてたもと涼しき夏はらへかな

俊成
禊する麻のたちはのあをにきて沢辺のかみもなびけとぞおもふ

俊成
おなじくは難波の浦に出でてこそあしてふことは禊にもせめ

新勅撰集 良経
はやき瀬の帰らぬ水に禊して行く年なみの半ばをぞ知る

俊成
麻の葉やことのもととぞ禊する荒ぶる神はあらじとおもへば

定家
夏はつる扇に露もおきそめてみそぎすずしきかもの河風

続後撰集 俊成
鳴滝や西の川瀬に禊せむ岩こすなみも秋や近きと

雅経
みそぎ川 かはなみしげく たちまよひ 夏は夏越しの けふのゆふぐれ

定家
明日香川ゆくせの浪にみそぎしてはやくぞ年のなかばすぎぬる

新勅撰集 家隆
風そよぐ楢の小川の夕暮は御祓ぞ夏のしるしなりける

実朝
禊する河瀬にくれぬ夏の日の入相の鐘のそのこゑにより

定家
夏衣おりはへてほす河波をみそぎにそふるせぜのゆふしで

新勅撰集・夏前関白道家
よしのがは かはなみはやく みそぎして しらゆふはなの かずまさるらし

続後撰集 後京極摂政前太政大臣良経
みそぎ川 浪のしらゆふ 秋かけて はやくも過る みなづきの空