心中の屍つつむ土用浪 虚子
土用浪銚子の町にきこへけり 喜舟
岬まで浜長々と土用波 石鼎
浜萩をゆるがせうつや土用波 石鼎
松原をはなれし道や土用波 茅舎
松並木へ人去る淋し土用波 石鼎
土用波海女が笛かと聞きすます 石鼎
去りがてのうしろ淋しや土用波 石鼎
死にしふりして蟹あはれ土用浪 石鼎
土用浪砂すひあぐるたまゆらや 龍之介
大湾の呑吐の船や土用浪 草城
淋しさは船一つ居る土用浪 石鼎
たそがれを降り出し雨や土用浪 石鼎
土用浪砂浜広く賑やかに 立子
土用波天うつ舟にわが乗りし 青邨
土用浪くづれし中へ子等もぐる 立子
岩窟の岩門のしきゐ土用波 草田男
土用波中空もただ岩盛る 草田男
土用波岩門岩窟声たてる 草田男
星もまた土用の色に土用浪 石鼎
土用波固くとざせる壕舎の扉 林火
佐渡見えて土用波の穂波を截る 欣一
土用浪能登をかしげて通りけり 普羅
樹に蜥蜴地を震はせて土用波 林火
かぎりある視力のうちの土用浪 波津女
土用浪海よりも吾つかれ果て 波津女
土用浪の裏は日あたりつつ奔る 楸邨
わが息の満ちきつて土用浪くづる 楸邨
土用波地ひびき干飯少しばかり 三鬼
土用波へ腹の底より牛の声 三鬼
島人は凪といへども土用波 青畝
つつ立ちてゆがみゆく顔土用波三鬼
童女亀を伴れ金の土用波 鷹女
薄減りの櫂をになへり土用波 静塔
土用浪うねりに壱岐を乗せにけり 青畝