遠花火この家を出でし姉妹
淡彩の聖観世音曼珠沙華
龍睨む秋のゆふべの東福寺
小田べりの水無瀬の紅葉水鏡
王冠のごとくに首都の冬燈
通天を小走りながら懐手
びるばくしや筆執る寒き堂の内
木の葉髪伯父父叔父の鬢の霜
炬燵板「上人伝記」のせて読む
風花の山紫水明狂へとぞ
クリスマスケーキ蝋燭の垣をなす
野を焼きて王子の趾を残したる
おほらかに秀衡桜見上げられ
寒鴉富田川原は塒かも
二色に断たれたる海鱚を釣る
島人は凪といへども土用波
土用波白緑と映え土佐涼し
滴りは石筍を打ち我を打ち
首垂れて物部の波に冷し馬
避暑の緑雲烟に乗る心地あり
低き雲避暑の衣袂をうるほせり
夜光虫しばらくの銅鑼喧しき
鰯雲網子の一生はてしらず
殉難碑げんのしようこの花は欠く