和歌と俳句

阿波野青畝

紅葉の賀

蓮破る雨に力の加はりて

惨として破れたるこの城の蓮

萩刈れば昴俄に近づきし

突き出たる風除棒に菊仆れ

前置の悲し狐火物語

息白き子のひらめかす叡智かな

をちこちに夜紙漉とて灯るのみ

一つの炉行住坐臥にかはりなく

天邪鬼肘をつきをる霜夜かな

耕人に信夫の鐘の鳴りにけり

雪の上杉の実落ちぬとぶらはむ

みちのくの子の赤足袋の鞐見え

旅遠き南部馬コの耳袋

角巻をずらせばすこし乱れ髪

角巻やおばこおばこと吟み

奥のつまごの跡のふかぶかと

束稲の紫に見ゆるなり

雪のみちまんさくの黄が見えしこと

問ひ答へ訛つて雪目しばたたく

壺の怒涛の岩に漱ぐ

戸隠ののにほひも宜ならむ

戸隠のは短しさるをがせ

麻刈りて大きな水車まはるなり

夕焼の極みのはてに浅間見ゆ

北の星とびはじめたり親不知