伊勢物語・十五段
しのぶ山忍びて通ふ道もがな人の心のおくも見るべく
後拾遺集・雑歌 能因
浅茅原あれたるやどはむかし見し人をしのぶのわたりなりけり
千載集 守覚
ほととぎすなほ初声を信夫山夕ゐる雲のそこに鳴くなり
千載集・恋 大中臣定雅
わがとこは信夫のおくのますげ原露かかるとも知る人のなき
千載集・恋 祝部成仲
君恋ふる涙しぐれ降りぬれば信夫の山も色づきにけり
千載集・恋 二條前皇后宮常陸
いかにせん信夫の山のしたもみぢしぐるるままに色のまさるを
新古今集 橘為仲朝臣
あやなくも曇らぬ宵をいとふかなしのぶの里の秋の夜の月
式子内親王
入りしより身をこそ砕け浅からず忍ぶの山の岩のかげ道
定家
しのぶ山裾野のすすきいかばかり秋のさかりを思ひわぶらむ
俊成
みちのくの信夫の里の近からばたち隠れても住まましものを
定家
しのぶ山こまちの奥にかふ鷲のその羽ばかりや人にしらるる
俊成
尋ねいる道も知られぬ信夫山そでばかりこそしをりなりけれ
定家
岩つつじいはでやそむるしのぶ山心のおくの色をたづねて
実朝
信夫山したゆく水のとしをへてわきこそかへれあふよしをなみ
新勅撰集・雑歌 寂延法師
しのぶやま このはしぐるる したくさに あらはれにける つゆのいろかな
蕪村
なつかしき忍の里のきぬたかな
秋櫻子
石坐る若楓より真青に
青畝
耕人に信夫の鐘の鳴りにけり