和歌と俳句

安積山 あさかやま

好忠
水草おひし 安積の岩井 夏なれば たもともひぢて むすびあえぬかも

季通
みさぶらひ みかさなめしそ 浅香山 このした露も いまは干ぬらむ

安積の沼

古今集・恋 よみ人しらず
みちのくの安積の沼の花かつみ かつ見る人にこひやわたらむ

信明
花かつみ かつみる人の 心さへ あさかの沼に なるぞわびしき

後拾遺集 藤原範永
さみだれは みえしをざさの 原もなし 浅香の沼の 心地のみして

顕季
さみだれに 安積の沼の 花かつみ 底の玉藻と なりやしぬらむ

俊頼
あやめ刈る 安積の沼に 風ふけば おちの旅人 袖かをるなり

俊頼
あやめ草 かげ水底に なみよりて 安積の沼も ふかみどりなる

師頼
さよなかに 思へば苦し みちのくの 安積の沼に 旅寝しにけり

新古今集・夏 藤原雅経
野邊はいまだ 浅香の沼に 刈る草の かつみるままに 茂る頃かな

俊恵
さみだれに をだのいはがき 水越えて 安積の沼も 名のみなりけり

式子内親王
浅ましや 浅香の沼の 花がつみ かつ見馴れても 袖はぬれけり

定家
憂しつらし あさかの沼の 草の名よ かりにも深き えには結ばで

定家
ふみしだく 安積の沼の 夏草に かつみだれそふ 信夫もぢずり

定家
いかにせむ あさかの沼に おふときく 草葉につけて 落つる涙を

此市に浅香の沼の田螺うれ 支考

すずしさの只水くさき匂ひかな 子規

草負ふて背中にすずし朝の露 子規

藻の花に燕の行へ遙か也 子規

殻とみて通る安積の田螺かな 青畝