星よりも噴煙重し去年今年
双六の一がよく憑く不思議かな
雪崩して谷川岳はなほ拒む
雪間より谷川岳のひびきけり
奉る和布鄙びぬ人麻呂忌
啓蟄のみみず日光浴を忌む
伊勢参輪中のみちを拾ひけり
麦青し貨物のみなる汽車の音
牧雀子持になつて鳴きにけり
きのふけふ濁世さながら黄沙かな
高野より西方に朴開きけり
毒ならば美しくあれ芥子を見る
夏至愉し牛と羊は野にあそぶ
寺の塔宙を劈く白夜かな
旅空に星くづまなき白夜かな
チボリの灯白夜の悔を説く勿れ
烏瓜翁のごとく咲きにけり
噴水に人生縮図まのあたり
氷河よりたどりたどりて飛瀑あり
鎮魂のあけくれ麦茶のみにけり
還来の宮につくつくぼうしかな
こほろぎや風に鍛へし声はずみ
満月に繽紛と翔ぶ出水鶴
子規忌より帰りは月をまともにす