ばらばらに葵桂や渡御果てて
くたびれて練る白丁どち葵踏む
明易や枕べに浮くマリア像
日ざすたび揚羽ひらひら濃あぢさゐ
田の中に墓碑ただ一つ虎ケ雨
赤汐もまぬがれざりし海月かな
熔岩に当らず星の流れけり
脱穀となり天仰ぐ法師蝉
雨の降るおしろい花や時化んとす
歎異抄閉づれば小夜の虫の声
立待の良き月まるき堅田かな
威銃大津皇子は天に在り
余呉川の漣敷きし野菊かな
豊の田に五十鈴川尻広くなる
冬来ても天の真名井は涸るるなし
国破れたりし山河を鷹知れり
岸の鴨暮れて尻ふりはじめけり
番鴨美醜かかはりなかりけり
絶壁の一点に鴛鴦とまりけり
絶壁は初冠雪にしたがはず
恵心堂抓めるほどや冬の山
ゆめうつつめく風花のいとまかな
煮凝やままこの皿も柿右衛門