和歌と俳句

五十鈴川 御裳濯川

新古今集・賀 匡房
君が代は久しかるべしわたらひや五十鈴の川の流れ絶えせで

後拾遺集・賀 経信
君が代はつきじとぞおもふ神風やみもすそ河のすまむかぎりは

公能
家の風 絶えずもわたれ 神風や 御裳濯川に こころそめてき

新古今集・神祇 慈圓
やはらぐる光にあまる影なれや五十鈴河原の秋の夜の月

新古今集・神祇 中院入道右大臣
たちかへりまたも見まくのほしきかな御裳裾川の瀬々の白波

新古今集・神祇 俊成
神風や五十鈴の河の宮ばしら幾千世すめとたてはじめけむ

俊成
けふもたれ五十鈴の川に禊して荒ぶる神も夏越なるらむ

俊成
宮ばしら下ついはねの五十鈴川よろづよすまむ末ぞはるけき

西行
藤波を御裳濯川に堰きいれて百枝の松にかけよとぞおもう

西行
初春をくまなく照らす影を見て月にまづ知る御裳濯の岸

西行
御裳濯の岸の岩根に世を籠めて固め立てたる宮柱かな

西行
いかばかり涼しかるらん仕へ来て御裳濯川を渡る心は

西行
流れ絶えぬ波にや世をば治むらん神風すずし御裳濯の川

良経
濁る世もなほ澄む影ぞ頼もしき流れ絶えせぬ御裳濯の月

良経
御裳濯の広き流れに照らす日あまねき影は四方の海まで

良経
君が代に出でむ朝日を思ふかな五十鈴川原の春のあけぼの

良経
神風や みもすそ川の 流れこそ 月日とともに 澄むべかりけれ

良経
神風や みもすそ川に ちぎりおきし ながれのすゑぞ 北の藤浪

新古今集・神祇 良経
神風や御裳濯川のそのかみに契りしことのすゑをたがふな

良経
あらたまの 年や神代に かへるらむ みもすそ川の 春の初風

定家
年ふともわすれむものか神風やみもすそがはの春のゆふぐれ

慈円
かみかぜや みもすそ川に よる波の 數かぎりなき 君がみよかな

定家
わがたのむ心の底をてらし見よみもすそがはにやどる月かげ

俊成
神風やみもすそがはのさざれ石も君が御代にぞ岩となるべき

定家
身をしればいのるにはあらで頼みこし五十鈴川浪哀かけけり

定家
月やどるみもすそ河の郭公秋のいくよもあかずやあらまし

実朝
月さゆるみもすそかはの底きよみいづれのよにかすみはしめけむ

定家
みてぐらの立つやいすずの河波に山のもみぢも幣やたむくる

定家
神風やみもすそ川に祈りおきしこころの底やにごらざりけむ

続後撰集・神祇 後鳥羽院
ひさかたの あまの露霜 いく世へぬ みもすそかはの 千木のかたそぎ


晶子
あかつきの杉の木立の中を行く御裳裾川の春の水おと

晶子
五十鈴川神のさかひへ逃れきぬ思ひ上りし人の身のはて

碧梧桐
八十神の御裳裾川や露時雨

草城
たたずめば御裳裾川の春の水

万太郎
暮遅や木の間がくれの五十鈴川

悌二郎
五十鈴川すこし遡ればくづれ簗

草城
五十鈴川ゆふさびの水もかむながら

草城
みもすその水もあやなしゆふまぐれ

万太郎
遅き日や木の間となりし五十鈴川

青畝
豊の田に五十鈴川尻広くなる