いつとても有明方は露けきをなほ限りなし長月のそら
人知れずももえの松を頼むかな藤の裏葉もあはれかけなむ
たけのみやまがきに植ゑて千代までと祝ひそめけむこの君ぞこれ
沖つ波あはれをかけよ和歌の浦の風にたづさふたづのゆくすゑ
いにしへのみほの岩屋は苔むして見れども飽かずとこめつらなり
たかちほのくしふるみねぞあふがるるあめのをずめのはじめとおもへば
続後撰集
宮ばしら下ついはねの五十鈴川よろづよすまむ末ぞはるけき
野邊は秋秋は真萩の花ざかり牡鹿つまとふ夕暮れのそら
月を見てちさとのほかを思ふにも心ぞかよふしらかはのせき
鈴鹿川きりのふるきのまろき橋これもやことのねにかよふらむ
ひれふりし昔をさへやしのぶらむまつらの浦を出づる舟人
春の過ぎ秋の暮れ行く別れにも年ふるままにたへずもあるかな
いづくをも旅ならずやは思ふべき憂き世ばかりの宿とこそきけ
春ははな秋はもみぢぞ散りまがふ誰れ山里にさびしといふらむ
ますらをは月をともにて守るなれやかどたの庵のまばらなるらむ
思ひ出では昔もさらになけれどもまだかへらぬぞあはれなりける
うき世をば何によそへて悟らまし夢ぞまことの道にはありける
つれなきは常なきことになりぬれば驚かれねぞ驚かれぬる
かけまくもかしこき豊の宮柱なほきこころは空にしるらむ
君が代は千代ともささじ天の戸や出づる月日の限りなければ