いつしかと降りそふ今朝のしぐれかな露もまだひぬ秋の名残に
袖ぬらす小島が磯の泊かな松風さむみしぐれふるなり
あはれにも夜はにすぐなるしぐれかな汝もや旅の空にいでつる
降る音も袖のぬるるもかはらぬを木の葉しぐれと誰かわきけむ
きみが世をのどかなりとや水とりも玉の砌に翼しくらむ
降りそめて友まつ雪はまちつけつ宿こそいとど跡絶えにけれ
ももしきやみ垣の松も雪降れば千代のしうしの花ぞさきける
煙たつ小野の炭がま雪つみて富士のたかねの心ちこそすれ
つもれただ道は絶ゆとも山里に日をふる雪を友とたのまむ
冬くれば氷と水の名をかへて岩もるこゑをなどしのぶらむ
暮れはてて越路にかへるあらたまの年ふりこめよ雪の白山
続後撰集
なかなかに むかしは今日も 惜しかりき 年やかへると 今はまつかな