いつしかも更へつる花の袂かなときにうつるはならひなれども
郭公しばしは待たじかへりにし春の名残の忘れもぞする
身をしればあはれとぞおもふ照る日うすき岩陰山に咲ける卯の花
柴舟のかへるみたにの追風に波よせまさる岸のうのはな
さやかにも鳴きわたるかなほととぎすなれやさ月の光なるらん
しのびづまおきゆく空に郭公なごりおほくも鳴きわたるかな
ほととぎすふたむら山を尋ぬれば峯をへだてて鳴きかはすなり
さみだれにきそのみ坂を越えわびてかけぢに柴の庵をぞさす
さみだれは蘆の八重葺きふきそへて空のけしきも隙なかりけり
たづねみむまぼろしもがな郭公ゆくゑもしらぬみな月のそら
夏の日をいとひてきつる奥山に秋もすぎたる松の風かな
水の面に夏の日数をかきやればまだき袂に秋風ぞ吹く