和歌と俳句

藤原俊成

いつしかも更へつる花の袂かなときにうつるはならひなれども

郭公しばしは待たじかへりにし春の名残の忘れもぞする

身をしればあはれとぞおもふ照る日うすき岩陰山に咲ける卯の花

柴舟のかへるみたにの追風に波よせまさる岸のうのはな

新古今集
たれかまた花橘に思ひいで我もむかしのひととなりなば

あはれにもともに伏見のさとにきてかたらひあかす郭公かな

新古今集
わが心いかにせよとて郭公くもまの月のかげになくらむ

さやかにも鳴きわたるかなほととぎすなれやさ月の光なるらん

しのびづまおきゆく空に郭公なごりおほくも鳴きわたるかな

ほととぎすふたむら山を尋ぬれば峯をへだてて鳴きかはすなり

さみだれにきそのみ坂を越えわびてかけぢに柴の庵をぞさす

さみだれは蘆の八重葺きふきそへて空のけしきも隙なかりけり

たづねみむまぼろしもがな郭公ゆくゑもしらぬみな月のそら

夏の日をいとひてきつる奥山に秋もすぎたる松の風かな

水の面に夏の日数をかきやればまだき袂に秋風ぞ吹く