続後撰集
谷ふかみ岩がたかうれゆく水の影ばかり見て袖ぬらせとや
新勅撰集
わが恋はなみこす磯の濱ひさぎしづみはつれどしる人もなし
あはでのみ伏見の里に立つしぎの羽かずにおつるわがなみだかな
人しれぬ心やかねてなれぬらむあらましごとのおもかげぞたつ
新勅撰集
こひしさのながむる空にみちぬれば月も心のうちにこそすめ
心をばとどめてこそは帰りつれあやしやなにの暮れをまつらん
うかりける秋の山路を踏みそめて後の世までもまどふべきかな
新古今集
よしさらば後の世とだにたのめをけつらさに堪へぬ身ともこそなれ
つらさにも落ちし涙のいまはただをしひたすらに恋しかるらん
いかにせむいかにかせましいかに寝て起きつる今朝の名残なるらむ
こひしともいはば愚かになりぬべし心をみすることのはもがな
恨みても恋しきかたやまさるらむつらさはよはるものにぞありける
新古今集
思ひあまりそなたの空をながむれば霞をわけて春雨ぞ降る
思ひやれ降らぬ空だにあるものを今日のながめの袖のけしきを
もろこしの人まで遠く尋ねばやかばかりつらきなかはありやと
なにとなく落つる涙にまかすればそこともみえぬ筆のあとかな
続後撰集
人しれぬ入江の浪にしほたれていかなる浦のけぶりとかみむ
つつみあまり袖の涙にせきかねてあらはれぬともおぼえつるかな
かへりしはいかがありけむわが身だにしづ心なくあかしつる夜を