和歌と俳句

大江匡衡

後拾遺集・秋
秋風に聲よわり行く鈴虫のつひにはいかがならんとすらん

後拾遺集・恋
こひしきになにはのこともおもほえずたれ住吉の松といひけん

後拾遺集・雑歌
あるが上に又ぬぎかくる唐衣いかがみさをもつくりあふべき

後拾遺集・雑歌
逢坂の関のあなたもまだみねば東のこともしられざりけり

後拾遺集・雑歌
河舟にのりて心の行くときはしづめる身ともおもほえぬかな

後拾遺集・雑歌
都にはたれをか君は思ひいづる都の人はきみをこふめり

後拾遺集・俳諧歌
はかなくも思ひけるかな乳もなくて博士の家の乳母せむとは

新古今集・哀傷
夜もすがら昔のことを見つるかな語るやうつつありし世や夢

新古今集・恋
人知れずおもふ心はあしびきの山した水の湧きやかへらむ