住の江の波より春や立ちぬらむ松吹く風もあらたまるなり
いざや子等わかなつみてむ根芹おふるあささはをのは里とほくとも
松かげに久しく消えぬ白雪はこぞのかたみに神や残せる
難波津は昔も梅の咲きければあまの苫屋も風かをるなり
浅緑おのが色とや思ふらむ柳のえだに鶯の鳴く
つららゐし垂水のもりの早蕨の折りにだにやは人の来ざらむ
よしのやま春の雪とは見えながら風こそかをれ花にやあるらむ
春雨は軒の糸水つくづくと心ぼそくて日をもふるかな
はむ駒のあしげにのみも見ゆるかな難波の春や深くなるらむ
春の空ことちにみえて帰る雁松の風にぞ聲かよふなる
思ふこと岩瀬の森の呼子鳥あはれしれらむ人のきけかし
すみれさくとほさと小野の朝露に濡るとも摘まむ旅のかたみに
昆陽の池のみぎはにさける杜若あしのかこひをまばらなりとや
住の江の松に藤こそ咲きにけれ梢にかかる紫のなみ
行く春をいづかたへともいはじとやくちなしにさく山吹の花
かへる春けふのふなてはむやひせよなほ住吉の松かげにして