長皇子御歌
霰打つ 安良礼松原 住吉の 弟日娘女と 見れど飽かぬかも
弓削皇子御歌
夕さらば 潮満ち来なむ 住吉の 浅香の浦に 玉藻刈てな
高市黒人
住吉の 得名津に立ちて 見わたせば 武庫の泊ゆ 出づる舟人
角麻呂
住吉の 岸の松原 遠つ神 我が大君の 幸しところ
余明軍
標結ひて我が定めてし住吉の濱の小松は後も我が松
車持千
白波の千重に来寄する住吉の岸の埴生ににほひて行かな年
作者未詳
住吉の粉濱のしじみ開けもみず隠りてのみや恋ひわたりなむ
安倍豊継
馬の歩み抑へ留めよ住吉の岸の埴生ににほひて行かむ
古集
悔しくも満ちぬる潮か住吉の岸の浦廻ゆ行かましものを
古集
住吉の岸に家もが沖に辺に寄する白波見つつ偲はむ
古集
住吉の沖つ白波風吹けば来寄する濱を見れば清しも
古集
住吉の岸の松が根うちさらし寄せ来る波の音のさやけき
万葉集巻七・譬喩歌
住吉の浅沢小野のかきつはた衣に摺り付け着む日知らずも
家持
住吉の浜松が根の下延へて我が見る小野の草な刈りそね
伊勢物語・六十八段
雁なきて菊の花さく秋はあれど春の海辺にすみよしの濱
古今集・雑歌 忠岑
住みよしとあまは告ぐとも長居すな人忘れ草おふといふなり
後撰集・恋 忠岑
住吉の松にたちよる白浪のかへるをりにやねはなかるらむ
後撰集・雑歌 元輔
住吉の岸とも言はじ沖つ浪なほうちかけようらはなくとも
後拾遺集・賀 元輔
住吉の浦の玉もを結びあげて渚の松のかげをこそ見め
拾遺集・雑 壬生忠見
みやこにはすみわびはてて津の国の住吉ときく里にこそゆけ
拾遺集・神楽歌 安法法師
あまくだるあら人神のあひおひをおもへばひさし住吉の松
藤原清正
住吉の 岸をりかへし かへしても たちよらまくの 欲しき君かな
兼盛
わが行きて 花みるばかり 住吉の 岸の藤波 折りなかざしそ
拾遺集 兼盛
住吉の 岸の藤波 我が宿の まつの梢に 色はまさらじ
拾遺集・神楽歌 恵慶
我とはば神世の事もこたへなん昔をしれる住吉の松
好忠
住吉のならしの岡の玉てぐり数ならぬ身は秋ぞかなしき
後拾遺集・雑歌 後三條院御製
住吉の神はあはれと思ふらむむなしき舟をさしてきたれば
後拾遺集・雑歌 経信
おきつ風ふきにけらしな住吉の松のしづ枝をあらふしらなみ
後拾遺集・雑歌 惠慶
住吉の浦風いたく吹きぬらし岸うつ浪の聲しきるなり
金葉集 修理大夫顕季
住吉の松にかかれる藤のはな風のたよりに波や折るらむ
金葉集・恋・詞花集・雑 相模
住吉の細江にさせるみをつくし深きにまけぬ人はあらじな
金葉集・雑 太宰大弐長実
住吉の松のしづ枝を昔よりいくしほそめつ沖つ白波
金葉集・雑 俊頼
いくかへり花咲きぬらむ住吉の松も神代のものとこそ聞け
詞花集・賀 能宣
すぎきにしほどをばすてつ今年より千代のかずつむ住吉の松
詞花集・賀 よみ人しらず
君が代の久しかるべきためしにや神もうゑけむ住吉の松
詞花集・賀 経信
住吉のあらひと神の久しさに松のいくたび生いかはるらむ
詞花集・雑 式部大輔資業
住吉の波にひたれる松よりも神のしるしぞあらはれにける
詞花集・恋 顕季
とどこほる ことはなけれど 住吉の まつ心にや ひさしかるらむ
経信
すむ人もすぎゆくわれも住吉の松のよはひと祈らざらめや
顕季
そのかみの かざしにしめし 住吉の 松のしづえは 波ぞをりくる