和歌と俳句

拾遺和歌集

雑歌

源経房朝臣
山ならぬすみかあまたにきく人の野ふしにとくもなりにけるかな

返し 健守法師
やまふしものふしもかくて心みつ今はとねりのねやぞゆかしき

右大将道綱母
わたつ海はあまの舟こそありときけのりたがへてもこぎいでたるかな

よみ人しらず
勅なればいともかしこし鴬のやどはととはばいかがこたへむ

寿玄法師
いなをらじ露に袂の濡れたらば物思ひけりと人もこそ見れ

能宣
梓弓はるかに見ゆる山の端をいかでか月のさして入るらん

伊勢
そらめをぞ君はみたらし河の水あさしやふかしそれは我かは

藤原仲文
かをさしてむまといふ人ありければかもをもをしと思ふなるへし

返し 能宣
なしといへばをしむかもとや思ふらんしかやむまとぞいふべかりける

恵慶法師
難波江のあしのはなけのまじれるは津の国かひの駒にやあるらん

忠見
難波潟しげりあへるは君がよにあしかるわざをせねばなるべし

忠見
みやこにはすみわびはてて津の国の住吉ときく里にこそゆけ

よみ人しらず
君なくてあしかりけりと思ふにもいとど難波の浦ぞすみうき

返し よみ人しらず
あしからじよからむとてぞわかれけんなにか難波の浦はすみうき

麗景殿みやのきみ
なき人のかたみと思ふにあやしきはゑみても袖のぬるるなりけり

菅原道雅女
みつせ河渡るみさをもなかりけり何に衣をぬきかくらん

皇太后宮権大夫国章
かくしこそ春のはじめはうれしけれつらきは秋のをはりなりけり

源重之の叔母
おやのおやとおもはましかばとひてましわがこのこにはあらぬなるべし

人麿
山高みゆふ日かくれぬ浅茅原後見むためにしめゆはましを

貫之
名のみして山は三笠もなかりけりあさ日ゆふ日のさすをいふかも