和歌と俳句

拾遺和歌集

雑歌

貫之
人しれずこゆと思ふらしあしひきの山した水にかげは見えつつ

人麿
おふの海にふなのりすらんわぎもこがあかものすそにしほみつらんか

村上院 御製
思ふ事なるといふなる鈴鹿山こえてうれしきさかひとぞきく

斎宮女御
世にふれば又もこえけり鈴鹿山昔の今になるにやあるらん

人麿
あすか河しがらみわたしせかませば流るる水ものどけからまし

小野宮太政大臣実頼
おくれゐてなくなるよりはあしたづのなどかよはひをゆづらざりけん

愛宮
年をへてたちならしつるあしたづのいかなる方にあととどむらん

元輔
ゆくすゑの忍草にもありやとて露のかたみもおかんとぞ思ふ

中務
うゑて見る草葉ぞ世をば知らせけるおきてはきゆるけさの朝露

ゆげのよしとき
露のいのちをしとにはあらず君を又見てやと思ふぞかなしかりける

元輔
をしからぬいのちやさらにのびぬらんをはりの煙しむる野辺にて

佐伯清忠
限なき涙のつゆにむすばれて人のしもとはなるにやあるらん

元輔
うき世には行きかくれなでかきくもりふるは思ひのほかにもあるかな

源景明
わび人はうき世の中にいけらじと思ふ事さへかなはざりけり

よみ人しらず
世の中にあらぬ所もえてしがな年ふりにたるかたちかくさむ

よみ人しらず
世の中をかくいひいひのはてはてはいかにやいかにならむとすらん

よみ人しらず
いにしへのとらのたぐひに身をなけばさかとばかりはとはむとぞ思ふ