斎宮女御
松風のおとにみだるることのねをひけば子の日の心地こそすれ
忠見
をのへなる松のこずゑは打ちなびき浪の声にぞ風もふきける
貫之
雨ふると吹く松風はきこゆれど池のみぎははまざらざりけり
伊勢
海にのみひぢたる松のふかみどりいくしほとかは知るべかるらん
能宣
わたつみの浪にもぬれぬうきしまの松に心をよせてたのまん
よみ人しらず
かこのしま松原ごしになくたづのあなながながしきく人なしに
能宣
いかで猶わが身にかへて武隈の松ともならむ行人のため
源道済
行末のしるしばかりにのこるべき松さへいたくおいにけるかな
よみ人しらず
世の中をすみよしとしもおもはぬになにをまつとてわが身へぬらん
源為憲
世とともに明石の浦の松原は浪をのみこそよるとしるらめ
よみ人しらす
もかり舟今ぞなぎさにきよすなるみぎはのたづのこゑさわぐなり
よみ人しらず
うちしのびいさすみの江の忘草わすれて人のまたやつまぬと
左大将済時
あさぼらけひぐらしのこゑきこゆなりこやあけくれと人のいふらん
藤原清正
あしまより見ゆるながらのはしばしら昔のあとのしるべなりけり
よみ人しらず
けふまでと見るに涙のますかがみなれにし影を人にかたるな
よみ人しらず
わするなよほどは雲ゐになりぬともそら行く月のめぐりあふまで
貫之
年月は昔にあらずなりゆけどこひしきことはかはらざりけり