和歌と俳句

岩代

和歌山県日高郡南部町岩代

中皇命
君が代も我が代も知るや岩代の岡の草根をいざ結びてな

有馬皇子
岩代の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまた帰り見む

有馬皇子
家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る

意吉麻呂
岩代の崖の松が枝結びけむ人は帰りてまた見けむかも

意吉麻呂
岩代の野中に立てる結び松心も解けずいにしへ思ほゆ

人麻呂歌集
後見むと君が結べる磐代の小松がうれをまた見けむかも


後拾遺集・恋 恵慶
岩代の もりのいはじと 思へども 雫に濡るる 身をいかにせん

金葉集・冬 中納言女王
磐代の 結べる松に 降る雪は 春も解けずや あらむとすらむ

金葉集・恋 源親房
ものをこそしのべばいはね磐代の杜にのみもる我が涙かな

顕季
岩代の 野中の松に あらねども 恋も年経る ものにぞありける

顕季
岩代の 野中にたてる むすび松 いつとくべしと 見えぬ君かな

顕季
岩代の 野中にたてる 結び松 とくべくもなき 君がこころか

顕季
末の世の 人に見よやと 岩代の 野中の松を むすび置きけむ

西行
岩代の 松風聞けば 物思ふ 人も心ぞ 結ぼほれける

新古今集・羇旅 式子内親王
行末は 今幾夜とか 岩代の 岡のかやねに 枕むすばん

新勅撰集・恋 顕輔
としふれど なほいはしろの むすびまつ とけぬものゆゑ ひともこそしれ

良経
さきの世に いかなる種を 結びけむ 憂しとも今は 岩代の松

雅経
岩代の をのへの松に ふれば 風の音まで むすぼほれつつ

定家
岩代の 野中さえゆく 松風に むすびそへつる 秋のはつしも

雅経
岩代の 野辺のしたくさ 吹く風に むすぼほれたる 松虫のこゑ

雅経
春もなほ むすぼほれてや 岩代の 野中にたてる 松の白雪