西行
雲消ゆる那智の高嶺に月たけて光をぬける瀧のしら糸
西行
木の本に住みける跡を見つるかな那智の高嶺の花を尋ねて
定家
雲かかるなちの山陰いかならむみぞれはげしき長き夜のやみ
実朝
冬こもり那智のあらしの寒ければ苔の衣のうすくやあるらむ
実朝
み熊野の那智のを山にひくしめのうちはへてのみ落ちる滝かな
節
三輪崎の輸崎をすぎてたちむかふ那智の檜山の瀧の白木綿
節
眞熊野の熊野の浦ゆてる月のひかり滿ち渡る那智の瀧山
節
ひとみなの見まくの欲れる那智山の瀧見るがへに月にあへるかも
節
このみゆる那智の山邊にいほるとも月の照る夜はつねにあらめやも
節
ぬばたまの夜の樹群のしげきうへにさゐさゐ落つる那智の白瀧
ここにしてまともにかかる白瀧のすずしきよひの那智山よしも
那智山は山のおもしろいもの葉に月照る庭ゆ瀧見すらくも
なちやまの白瀧みむとこし我にさやにあらむと月は照るらし
眞向ひに月さす那智の白瀧は谷は隔てどさむけくし覺ゆ
あたらしき那智の月かも人と來ばみての後にもかたらはむもの
那智山の瀧のをのへに飽かずみむこよひの月夜明けぬべきかも
やまとにはいひ次ぐ那智の瀧山にいくそ人ぞも月にあひける
晶子
雲の中に 那智の山あり 人かよひ 伐木すなり 春夏秋冬
牧水
末ちさく落ちゆく奈智の大瀧のそのすゑつかたに湧ける霧雲
牧水
まなかひに奈智の大瀧かかれどもこころうつけてよそごとを思ふ
牧水
朝凪の五百重の山の靜けきにかかりて響くその大瀧は