人麻呂
み熊野の浦の浜木綿百重なす心は思へど直に逢はぬかも
家持
御食つ国志摩の海人ならしま熊野の小舟に乗りて沖辺漕ぐ見ゆ
新古今集・恋 伊勢
み熊野の浦よりをちに漕ぐ舟のわれをばよそに隔てつるかな
信明
うきことも やまみち知らず たづねこし われみくまのに 入りやしなまし
俊頼
ま熊野に雨そを降りて木隠れのつかやにたてる鬼の醜草
梁塵秘抄巻二
熊野へ参るには 紀路と伊勢路のどれ近し どれ遠し 広大慈悲の道なれば 紀路も伊勢路も遠からず
梁塵秘抄巻二
熊野へ参らむと思へども 徒歩より参れば道とおし すぐれて山きびし 馬にて参れば苦行ならず 空より参らむ 羽賜べ 若王子
新古今集・神祇 後鳥羽院御歌
岩にむす苔ふむならすみ熊野の山のかひある行く末もがな
新古今集・神祇 後鳥羽院御歌
熊野川くだす早瀬のみなれ棹さすが見なれぬ浪のかよひ路
西行
み熊野の浜木綿生ふるうらさびて人なみなみに年ぞ重なる
西行
三熊野のむなしきことはあらじかしむしたれいたの運ぶ歩みは
西行
あらたなる熊野詣での験をば氷の垢離に得べきなりけり
俊成
み熊野のはまゆふかげに咲くすみれ重ねて色のむつまじきかな
寂蓮
霞さへ あはれ重ぬる み熊野の はまゆふくれを 思ひこそやれ
定家
時のまの夜半のころもの浜ゆふやなげきそふべきみ熊野の浦
定家
千早振熊野の宮のなぎの葉をかはらぬ千代のためしにぞ折る
実朝
五月雨を幣に手向けてみ熊野の山ほととぎす鳴きとよむなり
実朝
み熊野の浦の浜木綿いはずともおもふ心の数をしらなむ
新勅撰集・雑歌 入道前太政大臣公経
わたのはら なみとひとつに みくまのの はまのみなみは やまのはもなし
新勅撰集・雑歌 七條院大納言
みくまのの うらわのまつの たむけぐさ いくよかけきぬ なみのしらゆふ