和歌と俳句

源俊頼

君が代は はるかににほふ 桜花 こずゑにかけて 千歳みえける

家はげに 花のみふねと 見えつるは 君が千歳を つめるなりけり

今年より 千歳の春を 頼むかな 花のゆかりに とはるとおもへば

人知れず おもふ心は あるものを 花のゆかりと いはれぬるかな

あけくれは 風にわづらふ 身なれども 散るをば花の うへとこそみれ

花かとも 今日ぞおぼめく 雪ならば こずゑにのみは 降らじとおもへば

風ふけば こずゑも磯の 心地して 花のしらゆふ 波ぞこえける

花みむと 思ふ心に ひかされて すがるすがるも かきのぼるかな

をちこちに 花さきぬれば 鷺のゐる そなれの松に 身ぞまがへける

ここのへに たち重なりて 春霞 風にな見せそ 花のにほひを

やまかげに やせさらぼへる 犬櫻 おひはなたれて ひく人もなし

春の後は 君が嘆きに 花咲きて 思ひひらくる 折もありなむ

たれかまた あかず見るらむ 佐保山の 霞にもれて にほふ櫻を

霞もや 花のありかを たづぬらむ 夜をさへこめて たなびきにけり

佐保山に 花咲きぬれば 白妙の 天の羽衣 ぬきかけて見ゆ

やさしやな 苔のしとねに 散りそむる 花をころもに 重ねてぞ寝る

咲けば散る 花をときはの ものとみて 心しづかに 世をすぐさばや

白妙の 花のこずゑに めをかけて いそしの峯を おりぞわづらふ

金葉集
こずゑには ふくともみえで 桜花 かをるぞ風の しるしなりける

金葉集
おのれかつ 散るを雪とや 思ふらむ 身のしろごろも 花も着てけり