和歌と俳句

源俊頼

はふはふも 来ることたえし 梅が枝に 藤しだりける 宿とみつれば

吹く風に 藤江のうらを みわたせば 波はこずゑの ものにぞありける

新古今集・雑歌
さくらあさの をふのうらなみ たちかへり 見れどもあかず 山梨の花

さもこそは 勿来の関の かたからめ さくらをさへも とどめけるかな

數ふれば 春もこずゑに なりにけり 花とともにや 散りまがふらむ

みるままに うらなみかけて うぐひすよ 人のとどめぬ 春ならなくに

たちかへり 春おもふだに あるものを 君をさへけふ 待ち暮しつる

暮れてゆく 春をおもふも 来ぬ人を 待つにもまさる ゆかぬ心は

わかれゆく 弥生の空に したはれて しらぬの人にも まどふけふかな

とどまらむ ことこそ春の 難からめ ゆくゑをだにも しらせましかば

春しこそ 限りもあらめ み吉野の 霞は残れ かたみともみむ

わが宿を いとふかとこそ おもひつれ 野辺にもけふぞ 春は暮れける

金葉集
かへる春 卯月の忌に さしこめて しばし御阿礼の ほどだにもみむ