和歌と俳句

有馬山

古集
しなが鳥 猪名野を 来れば 有馬山 夕霧立ちぬ 宿りはなくて

後拾遺集・恋 小倉百人一首 大弐三位
ありまやま ゐなのささはら 風吹けば いでそよ人を わすれやはする

源兼昌
わたつうみは はるけきものを いかにして 有馬の山に しほ湯出づらむ

俊恵
有馬山 たかはかりしき 夜もすがら ふしもさだめぬ 草枕かな

俊成
有馬山 くもまもみえね 五月雨に いでゆのすゑも 水まさりけり

有馬山一まはりさへきくのはな 野坡

温泉の屋根に菖蒲葺くなり有馬山 碧梧桐

六甲の裏の夜寒の有馬の湯 虚子

鹿垣を見つつもぞ行く有馬かな 青畝

鹿垣のずり破れたつ山路かな 青畝

菌干して家毎の留守や有馬道 蛇笏

崖ぞひの暗き小部屋が涼しくて 虚子

灯涼しく粋にに山の端にはまだ日 杞陽

湯町なり路地片かげり雲流れ 杞陽

有馬の湯しづかなるとき妻も裸女 青畝