八一
おほてらのまろきはしらの月かげをつちにふみつつものをこそおもへ
八一
せんだんのほとけほのてるともし火のゆららゆららにまつのかぜふく
八一
とこしへにねむりておはせおほてらのいまのすがたにうちなかむよは
赤彦
霜晴れの光に照らふ紅葉さへ心尊しあはれ古寺
蟇ないて唐招提寺春いづこ 秋櫻子
八一
せきばくとひはせうだいのこんだうののきのくまよりくれわたりゆく
八一
あまぎらしまだきもくるるせうだいのにはのまさごをひとりふむかな
八一
よもすがら戒會のかねのひびきよるふるきみやこのはたのくさむら
八一
のきひくきさかのみだうにひとむれてにはのまさごにもるるともしび
金堂のほとりの水に菖蒲の芽 立子
白秋
目の盲ひて幽かに坐しし佛像に日なか風ありて觸りつつありき
白秋
唐寺の日なかの照りに物思はず勢ひし夏は眼も清みにけり
白秋
観音の千手の中に筆もたすみ手一つありき涙す我は
白秋
観世音像千手の指のことごとに眼坐しにき清みかがやかに
白秋
紫麿金の 匂おだしき 御座にして 文殊の笑 はてなかるらし
白秋
み眼は閉ぢておはししかなや面もちのなにか湛へて匂へる笑を
黒はえや校倉ふたつ間の松 槐太
夏風や佛は顎を引き給ひ 耕衣
塔のもと花のともしき秋の土 蛇笏
八一
りつゐんのそうさへいでてこのごろははたつくるとふそのにはのへに
八一
せうだいのけふのときこそうれしけれそうのつくれるいものあつもの
風つのりしだれ葉ざくらは吹き立てられ 草城
寺老いぬ春のしぐれのきらりとす 草城
寺深くひとりわが居りくれぐれに 草城