山賎のおとがい閉るむぐらかな
夏衣いまだ虱をとりつくさず
ほととぎすなくなくとぶぞいそがはし
卯花も母なき宿ぞ冷じき
五月雨や桶の輪きるる夜の声
髪はえて容顔蒼し五月雨
五月雨に鳰の浮巣を見に行む
鰹売いかなる人を酔すらん
いでや我よきぬのきたりせみごろも
酔て寝むなでしこ咲る石の上
瓜作る君があれなと夕すずみ
さざれ蠏足はひのぼる清水哉
一つぬひで後に負ひぬ衣がへ
若葉して御めの雫ぬぐはばや
鹿の角先一節のわかれかな
二俣にわかれ初けり鹿の角
杜若語るも旅のひとつ哉
蛸壺やはかなき夢を夏の月
月見ても物たらはずや須磨の夏
須磨のあま矢先に鳴くか郭公
ほととぎす消行方や嶋一つ
かたつぶり角ふりわけよ須磨明石
海士の顔先見らるるやけしの花