能なしの寝たし我をぎやうぎやうし
五月雨や色帋へぎたる壁の跡
粽結ふかた手にはさむ額髪
みな月はふくべうやみの暑かな
風かほる羽織は襟もつくろはず
杜鵑鳴音や古き硯ばこ
ほととぎす啼や五尺の菖草
水無月や鯛はあれども塩くじら
唐破風の入日や薄き夕涼
破風口に日影やよはる夕涼み
篠の露袴にかけししげり哉
郭公声横たふや水の上
風月の財も離よ深見艸
雨折々思ふ事なき早苗哉
旅人のこころにも似よ椎の花
椎の花心にも似よ木曾の旅
うき人の旅にも習へ木曾の蝿
夕顔や酔てかほ出す窓の穴
窓形に昼寐の台や簟
寒からぬ露や牡丹の花の蜜
木がくれて茶摘も聞やほととぎす
卯の花やくらき柳の及ごし
紫陽花や藪を小庭の別座敷