和歌と俳句

松尾芭蕉

結ぶより早歯にひびくかな

あらたうと青葉若葉の日の光

暫時はにこもるや夏の初

ほととぎすうらみの滝のうらおもて

秣負ふひとを枝折の夏野

山も庭にうごきいるるや夏ざしき

木啄も庵はやぶらず夏木立

田や麦や中にも夏のほととぎす

汗の香に衣ふるはん行者堂

夏山に足駄をおがむ首途哉

野をよこに馬牽むけよ郭公

落くるやたかくの宿の郭公

湯をむすぶ誓も同じ石清水

の香や夏草赤く露あつし

田一枚植て立去る柳かな

西か東か先早苗にも風の音

早苗にも我色黒き日数哉

風流の初やおくの田植うた

関守の宿を水鶏にとはふもの

世の人の見付ぬ花や軒の

かくれ家や目だたぬ花を軒の栗

五月雨は滝降うづむみかさ哉

早苗とる手もとやむかししのぶ摺

笈も太刀も五月にかざれ帋幟

弁慶が笈をもかざれ帋幟