後拾遺集 大中臣輔弘
八重しげるむぐらの門のいぶせきにさらずや何をたたく水鶏ぞ
新勅撰集・雑歌 上東門院小少将
あまのとの つきのかよひぢ ささねども いかなるかたに たたくくひなぞ
新勅撰集・雑歌 紫式部
真木の戸もささでやすらふ月影になにをあかずと叩く水鶏ぞ
俊頼
柴の庵をたたく水鶏に夢さめて誰がならはしに起きてとふらむ
金葉集 藤原顕綱朝臣
里ごとに叩く水鶏の音すなり心のとまる宿やなからむ
金葉集 源雅光
夜もすがらはかなくたたく水鶏かな鎖せる戸もなき柴のかりやを
頼政
水鶏とは 思ひもあへず あけにけり 人待つやどの 夜半のとざしは
頼政
こころなく 我おどろかす 水鶏かな またまどろまば またな謀りそ
頼政
あれはてて たつるともなき あへてらを 叩くは夜半の 水鶏なりけり
俊成
たたくなりこれは水鶏の音ならむ宵にぞ人は訪はばとはまし
西行
杣人の暮にやどかる心地していほりをたたく水鷄なりけり
寂蓮
月はさす 水鶏はたたく まきのとを おもひあへぬに あくるしののめ
式子内親王
たたきつる水鶏の音もふけにけり月のみ閉づる苔のとぼそに
定家
あづまやのさせる戸ざしも夏の夜は明くるを叩く水鶏なりけり
定家
まきのとをたたく水鶏のあけぼのに人やあやめの軒の移り香