雲を根に富士は杉なりの茂かな 芭蕉
篠の露袴にかけししげり哉 芭蕉
宮川の筏も神のしげりより 千代女
日の脚の道付かへる茂りかな 千代女
君が世や茂りの下の耶蘇仏 一茶
道ばたに只一本の茂り哉 子規
茂りより二本出て来る筧哉 漱石
天狗住んで斧入らしめず木の茂り 子規
柱にもならで茂りぬ五百年 子規
石段の一筋長き茂りかな 漱石
昼中は枝の曲れる茂りかな 龍之介
昼深う枝さしかはす茂りかな 龍之介
うねうねと枝に縫はるる茂りかな 龍之介
とうとう道がなくなつた茂り 山頭火
入口の道見えて居る茂りかな 石鼎
大木を茂りの中に見上げけり 石鼎
崖筧ここにまたある茂かな 石鼎
幼稚舎のうしろにみゆる茂りかな 万太郎
大枝を引きずり去りて茂かな 久女
白秋の詩碑のからたち垣茂り 爽雨
灯ともさば雨音わたる茂りかな 源義
山の容残して暮るる茂りかな 源義
置燈籠包む茂りも高からず 虚子
美しき茂りの港目のあたり 虚子
庵の草木繁り尽して居りにけり 石鼎
草も木も繁りつくして静かかな 石鼎
親しき家もにくきも茂りゆたかなり 龍太