薫とやとかく奇麗な風の色 才麿
風かほる羽織は襟もつくろはず 芭蕉
松すぎをほめてや風のかほる音 芭蕉
さざ波や風の薫の相拍子 芭蕉
帆をかふる鯛のさはきや薫る風 其角
一丈の風のかほりや庭の松 野坡
風薫る人の古ひや椎はしら 野坡
高紐にかくる兜やかぜ薫る 蕪村
風かほれ唐とやまとの墨の色 白雄
踏みならす橘橋や風かをる 子規
薫風や裸の上に松の影 子規
絵の嶋や薫風魚の新しき 子規
薫風や銀杏三抱あまりなり 漱石
薫風に昼のともし火瀧の前 虚子
舞殿や薫風昼の楽起る 碧梧桐
薫風や千山の緑寺一つ 子規
薫風吹袖釣竿担ぐ者は我 子規
薫風や瀧の腹見る寺の縁 虚子
帆綱浸る舟の艪ゆれや風薫る 碧梧桐
待つ船を物見に出るや風薫る 碧梧桐
大樹の下児女鶏犬に風薫る 碧梧桐
富守れば父祖の蔵書も風薫る 碧梧桐
山寺へ上す籠雉や風薫る 碧梧桐
薫風に歩めばさめぬ船の酔ひ 淡路女
薫風の鏡に写す眉目かな 草城
薫風やくくし上げたる竹行李 草城
烏丸やみな薫風の甍かな 草城
薫風の素足かがやく女かな 草城
人少なにあれど薫風釈迦如来 水巴
飯中の八仙行くや風薫る 龍之介
薫風やゆづり葉落ちて草による 石鼎
薫風や畳替へたる詩仙堂 茅舎
薫風や白粉吐きたるなんばの葉 泊雲
薫風に翔ちたぢろぎて啼く燕 花蓑
薫風や池をめぐりてもとの道 石鼎