旅人のこころにも似よ椎の花 芭蕉
椎の花心にも似よ木曾の旅 芭蕉
椎の花人もすさめぬにほひ哉 蕪村
岩陰や水にかたよる椎のはな 子規
雷晴れや日にのぞかるる椎の花 蛇笏
椎の花竹にこぼれてさらさらと 泊雲
白雲や椎の花ふる真午中 石鼎
椎の花餅を搗く蚊のこぼしけり 青畝
椎落花風に吹かれてころころと 播水
椎の花雨となりゆく夜を白し 貞
園の花絶へしより夜々椎にほふ 悌二郎
椎にほひ夜の戸をたつもおくれがち 悌二郎
人が病むあをみなつきを椎にほふ 悌二郎
椎の花古葉まじりに散り敷きし たかし
椎落花煩悩匂ふ無尽かな 茅舎
湯もどりの子の濡髪に椎匂ふ 誓子
雨しづきつゝかぐはしき椎の花 誓子
花過ぎてなほ杜中に椎匂ふ 誓子
杜に入る一歩に椎の花匂ふ 誓子
言葉のあと花椎の香の満ちてくる 多佳子
花椎やもとより独りもの言はず 多佳子
花椎の香に偽りを言はしめし 多佳子
御所風の大本山や椎の花 青畝
眼鏡かけて刻む西暦椎の花 三鬼
椎どつと花降らす下修道女 三鬼
老いらくの高き匂ひを椎の花 不死男