杏子 あんず アプリコット
医者どのと酒屋の間の杏かな 召波
晶子
杏の実うすく赤める木の下に砂を流せるあけがたの雨
赤彦
古りにし佛の御堂にまゐり来れば杏は熟れぬ道のうへの木に
赤彦
七月の旱天久しみ埃ふかき街なかの木に杏熟れたり
赤彦
善光寺山門下の家々に木垂る杏は黄に熟れにけり
静脈の浮いた手に杏をとらへ 龍之介
杏子あまさうなひとはねむさうな 犀星
あんずあまさうな雑木の門がまへ 犀星
となり家の杏落ちけり小柴垣 犀星
方丈の沓かりてもぐ杏かな 禅寺洞
窪地ぬかるみ杏あをんでゐたり 彷徨子
湯を沸かす木垂る杏の青き辺に 槐太
風見鶏くくとまはりぬ杏掌に 楸邨