わらんべの洟もわかばを映しけり
をんあごの顔剃らせゐる若葉かな
塗り立てのペンキの塀や花ざくろ
しら芥子や施米の桝にほろと散る
岡あやめ訪ふひとはみな乙女つれ
にさんにちむすめあづかりあやめ咲く
絲捲きに絲まかれゐるあやめかな
芭蕉玉巻のぼる暑さかな
ひんがしに芭蕉の花の向きにけり
江漢の塚も見ゆるや茨の花
昼近き雨落着くや葱の花
杏子あまさうなひとはねむさうな
あんずあまさうな雑木の門がまへ
となり家の杏落ちけり小柴垣
昼顔に浅間砂原あはれなり
昼顔や海水あびに土手づたひ
夏深く山気歯にしむ小径かな
朝日さす町の埃や夏名残
秋待や径ゆきもどり日もすがら
秋近や落葉松うかぶ風呂の中
竹の幹秋近き日ざし辷りけり
あさがほや蔓に花なき秋どなり