次の夜は蛍痩せたり籠の中 子規
蛍籠樒売る家に吊しけり 碧梧桐
人亡せし家と見過ぎぬ蛍籠 万太郎
さびしさや箪笥のうへの蛍籠 万太郎
ふりしきる雨となりにけり蛍籠 万太郎
蛍籠広葉の風に明滅す 久女
蛍籠飛ぶ火落つる火にぎやかに たかし
蛍籠ともつてゐるや町のはし 青畝
蛍籠今宵もともりそむるなり 夜半
蛍籠ともりそむれば見ゆるなり 夜半
雨少し降りたる軒の蛍籠 波津女
病人のつづきてさびし蛍籠 播水
手に持てる蛍の籠の灯りけり 波津女
くらがりに釣して円き蛍籠 花蓑
あけがたやうすきひかりの蛍籠 林火
これはまた二尺四方の蛍籠 石鼎
青草をいつぱいにしてほたる籠 蛇笏
手につたふ露の雫や蛍籠 淡路女
病める子の夜は眠るなる蛍籠 汀女
帯解きていでしつかれや蛍かご 万太郎
蛍籠極星北に懸りたり 誓子
蛍籠むしろ星天より昏く 誓子
揺るる星宙に繋れり蛍籠 誓子
ほたる籠気やすめ言葉かはしつつ 悌二郎
蛍かご入日を移し哀れがる 犀星
褪せはてし写真の祖母や蛍籠 楸邨
蛍籠軍靴さくさくさくさくと 楸邨
国葬の夜を厨房のほたるかご 蛇笏
蛍籠電車郊外を走りをり 林火
征くひとに一夜の宴の蛍籠 林火
ほたるかごまくらべにしてしんのやみ 蛇笏
昏みたる泉にひたすほたるかご 蛇笏
瀧霧にまひながれゐるほたるかご 蛇笏
蛍籠秒音たかくひびきけり 林火
蛍籠昏ければ揺り炎えたたす 多佳子
蛍籠わが寝しあとは誰も見ず 波津女
海も闇陸も闇にて蛍籠 波津女
死にければ闇たちこむる蛍籠 誓子
蛍籠霧吹くことを愛として 波津女
蛍籠よるひる音のなきままに 波津女
逢へばまた逢つた気になり蛍籠 万太郎
明け白む蛍ごときに籠静か 耕衣
やうやくに睡くなりけり蛍籠 波郷
旅土産の蛍籠はや水吹かむ 爽雨
蛍籠われに安心あらしめよ 波郷
草むらに置く深窓の蛍籠 不死男
少年の腰にともれる蛍籠 誓子
蛍籠閨の灯とせり星とせり 静塔
少年が仏間にほたる籠移す 双魚