和歌と俳句

皆吉爽雨

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神の木の実梅宝蔵ぞひに干す

花の香につづく水の香菖蒲見る

旅土産の蛍籠はや水吹かむ

汗つづくまかりし昨日の葬より

堆書裡に古扇風機吾としづむ

庭にして緑蔭なせば朝な立つ

幼きか痩せしか暑き地の雀

堆書見ゆ避暑山荘の障子より

白きへと移る山吹新茶くむ

傘立つる夕雨牡丹明日を在れ

苗代を見めぐりもさはに摘む

つむりやや親子すずめの濃きあはき

田を植うるかしこは鷺の立ちまじり

移りざましかと郭公鳴きつづく

鯉が蹤き鯉にわがつき水涼し

町川の鯉金に照り鴎外忌

絵の旅の父に伴ひ夏やすみ

湧き口に長藻分るるかな

旅いつも来向へる中単衣着る

声まろぶ大瑠璃鳥樹海かたむくに

あぢさゐの水漬けるところ一碧に

万緑の旅のやうやく身に温泉の香

白南風や足裏こたへに防風の実

頬はれて梅雨の子風邪か生ふる歯か