鹿の子のこち見る顔にあふるる眼
鹿の子の蹄ふみ割り歩くなり
仏見て引きたるを又旅の汗
梅雨明くる旅の奈良なる鴟尾のもと
殺生を見ざれば去りぬ蟻地獄
音読を朝の一つ時夏やすみ
新茶くむ対座のひまを夜気ながれ
山路ゆくさしかけ日傘しかと寄れ
代田水木曾の車窓に澄みつづく
木曾五木かも夏山の駅に積む
旅に過ぐ薄暑の漆器町匂ふ
ほととぎす鳴き絶えし方姥子の湯
風かよふうなじ高しや籠枕
蓋とりて柿の葉鮓は築くごとし
おろされし大石いづこ鮓を食ふ
鮓腹に吉野の山河帰りなむ
ほほづきにみなが受け口祭の夜
中元の昔甚平はや着まく
一身のま直ぐに眼ざめ籠枕
眉にほふ子と机をひとつ夏休
はじめての道も青水無月の奈良
ひとりにあれば鹿の子斑をふるふ
老鶯や蔵王越えいま雲に入る
避暑行の蔵王の一の鳥居大