風ふけば撫子のよる巨石かな
秋雨や踏切ふさぐ離れ貨車
朝寒や息かけて押す出勤印
鳴子板逆立ちつつや鳴るはげし
秋風にちらほら楠の嫩葉かな
柿秋や懇望されて十四嫁
コスモスや風に撓みてもれもなし
秋祭子等汲みあそぶ宮井かな
蕎麦刈るや藁束さげて老の腰
墓参人鳴きやむ蝉の樹を仰ぎ
髪梳いて疲れし母や葉鶏頭
おのが座や柱に添へる月を見る
馬追の鳴音ひびける壁に倚り
光り出づ深き露あり八重葎
縄切れに蝗とまれる刈田かな
色鳥や屋形つくりし手水鉢
落し水たたずむほどに音高く
かがまれるあぎとに草や月を待つ
遠望やなびき伏したる芒越し
漏りそめし客のうしろや秋の雨
淀凪や障子を洗ふ波ばかり
母が裾仏華剪りきし露まみれ
頂上の床几しまひや鹿夕べ
そぼぬるる鹿になげ餌や堂やどり
行秋の草の穂ふぶく戸口かな