和歌と俳句

葉鶏頭 雁来紅 かまつか

百姓の秋はうつくし葉鶏頭 子規

うつくしき色見えそめぬ葉鶏頭 子規

子規
夏菊の枯るる側より葉鶏頭の紅深く伸び立ちにけり

子規
起しても首うなだるるかまつかの物思ふさまぞあはれなりける

病む頃を雁来紅に雨多し 漱石

子規
青空に 聳ゆる庭の かまつかは 我にあるけと いへるに似たり

葉鶏頭団子の串を削りけり 漱石

左千夫
かまつかをいやしとを云へ秋ふけて色さびぬれば飽なくおもほゆ

晶子
養はるる寺の庫裏なる雁来紅輪袈裟は掛けで鶏おはましを


葉鷄頭は種にとるべくさびたれど猶しうつくし秋かたまけて

誰が植ゑて雁来紅や籠り堂 碧梧桐


我が植ゑし庭の葉鷄頭くれなゐのかそけく見えて未だ染めずも

葉鶏頭端書一ぱいに書きにけり かな女

葉鶏頭高さ五尺に育てけり 漱石

晶子
みづからをしひて頼めり野分吹く雁来紅の一丈の紅

晶子
新しく湧き上りたる恋のごと雁来紅の立つはめでたし

高々と薄き黄色や葉鶏頭 石鼎

晶子
ふと心めでたき鳥を飼ふとしぬ雁来紅の尺ばかりなる

葉鶏頭の葉二三枚灯にまとも 虚子

雁はれや添へ竹立てゝ雁来紅 石鼎

葉鶏頭のいただき躍驟雨かな 久女

葉鶏頭に土の固さや水沁まず 久女

石の間に生えて小さし葉鶏頭 久女

障子いれて日影落ちつきぬ雁来紅 水巴

瑞々と黄に燃え残し葉鶏頭 花蓑

髪梳いて疲れし母や葉鶏頭 爽雨

雁来紅にたちよりときぬ洗ひ髪 淡路女

齢を問へば雁来紅に目をつむる 草城