詩に名ある 種竹山人 志那に行くと 歌もて送る 竹の里人
廬山の雨 赤壁の月 そこに行きて 君が作る詩 いにしへしぬがん
門出には たゝみて入れし 詩の嚢 車に載せて 歸り来んかも
我庭の 萩散る頃を から國の 北の都に 君入るらんか
岳陽楼上 長きかたみを とどむらん 日本本田種竹題すと
人を刺す 蟲をかしこみ からへ行く 君が首途に 草はなむけす
秦淮の 秋の柳の 秋寒み から人さびて 詩を詠まんかも
およづれの まが言は世に 絶えざらん 書商人に 君あらなくに
これや行き から行く君を 草づつみ 病あらせず よくもれ詩の神
わが魂は 鳥にもがもや 君が行く からの山々 見て歸るもの
四年寐て 一たびたてば 木も草も 皆眼の下に 花咲きにけり
青空に 聳ゆる庭の かまつかは 我にあるけと いへるに似たり
夏されば 茨花散り 秋されば 芙蓉花咲く 家に書あり
我知らぬ 小坂の繪師は 此あたりに 住みしときけど 其家もなし
昔我 善く見てしれる 金杉の いも屋の庭の 秋海棠の花
三味の師と 同じ長屋に 住みきとふ 虚子の家いづこ 三味の師は居る
音なしの 川邊に生ひて 三年経し 枇杷の蕾の ともしろきかも
萩の花 すでに散らくも 彼岸過ぎて 猶咲き残る さるすべりかも
をさまれる 御代のためしに 二抱え 三抱えもある 冬瓜なりいでつ
道の邊に なる烏瓜 又の名を 玉づさといふと きけばゆかしく