われ男の子意気の子名の子つるぎの子詩の子恋の子ああもだえの子
よき音その鴬籠のせばきにもいきどほろしき我世となりぬ
そや理想こや運命の別れ路に白きすみれをあはれと泣く身
紫の紅の萌黄のみづいろの糸はさまざま花は真白き
新しき冠たまはり人を載せて西七百里蘇州へわたる
わかれてはまたちる花にかごと云はずあわただしくも水を南へ
雲を見ず生駒葛城ただ青きこの日なにとか人を咀はむ
蘭を手に麻のまごろも竹の笠わかきひじりを紀の山に見る
おばしまに柳しづれて雨ほそし酔ひたる人と京の山見る
手をたまへ梨の花ちる川づたひ夕の虹にまぎれていなむ
われにそひて紅梅さける京の山にあしたおりつ神うつくしき
みだれ髪にかざしは青き松の若葉しろき裳裾は水にひたぬ
鎌倉はちさくはかなき夢の跡よまた頼朝の脊を拊つな君
竹に染めし人の絵の具はうすかりき嵯峨の入日はさて寒かりき
白き羽の鶴のひとむら先づ過ぎぬ 梅に夜ゆく神のおはすよ
野のゆふぺ花つむわれに歌強ひてただ紫と御名つげましぬ
われいまだ云ひとく道をおもふまでに世をかへりみる弱き子ならず
世に立たん栄よ力よ君によりて今日わが得たるうつくしき鞭
扶けのせて柳かざしてうつくしき手綱の御手にそと口ふれぬ
恋といふも未だつくさず人と我とあたらしくしぬ日の本の歌
そのあした紅の袖口裂きし子を人はねたまであはれと泣きぬ
世の常のそしりもつ子に今日なりぬゑにしの神の袖うらみあり
母にそひてはじめて菫わが摘みし築土ふりたり岡崎の里
師の君の御袖によりて笑むは誰ぞ興津の春の雪うつくしき
うしろよりきぬきせまつる春の宵そぞろや髪の乱れて落ちぬ