長塚 節
惜しまるゝ花のこずゑもこの雨の晴れてののちや若葉なるらむ
昨日こそうしほあみしか大磯のいそふく風に千鳥なくなり
若水を汲みつゝをれば標はへしふたもと松に日影のぼりぬ
生れしはをのこなるらむ菖蒲草ふきし軒端に幟たてたり
萩こえし垣をまがりて右にをれて根岸すぐればむしぞなくなる
水仙の花にむしろもおほひあへず小さき庭をかせ時雨きぬ
船にねて船をいづれば曉のはつ雪しろしかけはしの上に
管の根のながながし日も傾きて上野の森の影よこたはる
睦月七日寺島村によぎりきて雪かさきたる梅あるをみつ
歌人の竹の里人おとなへばやまひの牀に繪をかきてあり