和歌と俳句

幟 のぼり

いさましや風まで添てのぼり売 来山

幟出す南はせかず和田恩地 来山

絵のぼりや那須紙七騎武者尽し 言水

長棹や天にあがりてかみ幟 言水

笈も太刀も五月にかざれ帋幟 芭蕉

弁慶が笈をもかざれ帋幟 芭蕉

影法師を寺にも建る幟かな 也有

木がくれて名誉の家の幟哉 蕪村

家ふりて幟見せたる翠微哉

斎に来て幟うらやむ小僧哉 召波

濡ともと幟立けり朝のさま 太祇

古き代を紋に問るゝのぼりかな 太祇

門の木にくくし付けたる幟哉 一茶

江戸住や二階の窓の初幟 一茶

幟から引つづくなり田のそよぎ

幟たてて嵐のほしき日なりけり 子規

雨雲をさそふ嵐の幟かな 子規

大風の俄かに起る幟かな 子規

幟暮れて五日の月の静かなり 子規

朝嵐隣の幟立てにけり 子規

山里に雲吹払ふ幟かな 子規

五女ありて後の男や初幟 子規


生れしはをのこなるらむ菖蒲草ふきし軒端に幟たてたり

我高く立てんとすなる幟かな 碧梧桐

雨に濡れ日に乾きたる幟かな 虚子

うち立てて見えぬ幟の破れかな 虚子

千樫
家家にさつき幟のひるがへりしかしてひとり吾が去りゆく

門の内馬もつないで幟かな 鬼城

飛騨山の質屋も幟たてにけり 鬼城

竿揺れつ矢車迅き幟かな 爽雨

中天の陽をあふち撲つ幟かな 月二郎

手伝うて幟下すや酒機嫌 月二郎

快晴や阜上家あり幟四五 草城

はためけば幟いよいよ勇しき 草城

番町の空に立てたる幟かな 万太郎

夕あらしいよいよ強き幟かな 万太郎

旅絵師に鐘馗は描かせ幟かな 喜舟

旅離る長けし子吾子の幟立つ 

はたはたと幟の影の打つ如し 汀女

江山の晴れわたりたる幟かな 虚子

敷むしろしてよき幟下ろさるる 爽雨

武者幟合戦の場の極彩図 誓子