日々通るいまは葉ざくらとなりし道
旅離る長けし子吾子の幟立つ
噴霧器にさうびのみづ枝虹湧けり
八ヶ岳仰ぐやわらび手にあまり
郭公はしきりにつゝじまだ燃えず
子が告げし木苺のみち朝あるき
りんだうや湯の香こもれる瀬をわたる
越の山近し花野の風は落ち
真近なる星に夏炉のまどゐ更く
夕やけの大きな山に迎へられ
霧湧くやキヤムプに炊ぐ火を守りて
雷険し消ぬべき灯うち仰ぎ
髪洗ふ五月の風の井のほとり
小草とる木かげは茱萸の紅こぼれ
梅雨ふかし蔓まきそめし朝顔に
臥す蚊帳に夜々の小鳩は鳴きはじむ
縫ひあげて又縫ひつぎて梅雨の日々
縫ふ藍の指にほの染み五月雨
セルを着ていちご食ぶ日の誕生日
雨のばら濡れても切りぬ誕生日